冨田 ラボ / Shipbuilding
2003年の春、社会人3年目を迎えてもなお学生気分の抜けない僕は、どうしようもない「会社の都合」で、お世話になった埼玉の職場から都内へ移ることとなった。
その頃の僕をいま思えば、実家暮らしでのうのうと生活し、3年前に別れた女の子のことを未だに忘れられず、それでも醒めているフリをしているような、つまりは「自立できていない」感が全面に表れているような人間だったような気がする。たぶんその頃の僕は、様々なことに対して「裏切られたけど、全然気にしてないよ」というフリをして強がっていた。いま思えばそれはとても甘かったし、でもとても純粋な気持ちだったと思う。
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新しい生活は、正直あり得ないほどに、少なくとも当時の僕にとっては、とても辛かった。
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それは確かに、仕事に対するものがほとんどを占めていたと思うのだけど、自立できていなかった僕は、ここぞとばかりに全てをそれのせいにして、色々なことを辛く感じていた。暖かくなってきた外の匂いとか、満開に咲くさくらの花とか、未だに忘れられないあの人のこととか、それが例年になく心地良い気がして、「こんなに心地良い春が、なんでこんなに辛くなくっちゃいけないんだろう」と思った。
会社の帰りがけにこっそり、エレベータのドアを何度も思いっきり蹴飛ばしていた。未だに忘れられないあの人が言ってくれた、おそらく一生忘れられないであろうアドバイスを思い出して、そのとおりに、辛い日は必ず空を見ながら歩いて帰っていた。当時は実家に住んでいたから、今よりもだいぶ多くの星が見えていた。そしてそれを強がって「気持ちいいなあ」と思うようにしていた。
今までよりも長時間で、さらに埼京線のものすごいラッシュに巻き込まれるようになった通勤電車で、僕は毎日同じアルバムを聴いた。新宿で降りるべきところを池袋で降りて、わざわざ遠回りしながら聴いた。「電車が遅延しているので午前半休します」と会社にメールして、喫茶店でボーッとしながら2時間ぐらい聴いていたこともあった。寝るときも起きるときも、同じアルバムを聴いていた。
それが「冨田ラボ / Shipbuilding」だった。
畠山美由紀の「耐え難くも甘い季節」という「美しすぎる日本のことば」に、何度となく感動した。松任谷由美の素晴らしい「日本のポップ」に、衝撃を受けた。その「素晴らしい日本語のうた」を見事に継承したキリンジやハナレグミの楽曲に、とても嬉しい気持ちになった。そして、サイゲンジや bird という「日本人の可能性」を感じるアーティストたちもひっくるめ、それら全てを、アメリカンポップスのいい部分を吸収しながら見事なまでに「日本人の楽曲」としてアルバムにしてしまった冨田恵一に、とてつもなく感謝した。もう本当に、呆れるほどに毎日聴いていた。
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あの「甘かった季節」から、ちょうど2年が経った。
仕事は相変わらず好きではないけれども、それでもだいぶうまくやれるようになってきたと思う。昔なら絶対にしたくなかった愛想笑いも、今ではちょっと面白がってできるようになった。いつのまにか、ひとりで都会暮らしをするようになっていた。「先のことなんてどうでもいいや」とは、ちょっと思わなくなった。どうしようもなく寂しい気持ちを、自分の中でだいぶ認められるようにもなった。昔に比べて、あまり強がらなくなったと思う。
春が始まろうとする頃、僕はあの「甘かった季節」を思い出し、何度でもこのアルバムを聴くだろう。
[ 関 連 記 事 ]
- ハナレグミ / 家族の風景 (2006/04/10)
- Saigenji / La Puerta (2009/11/26)
- Al Kooper / Naked Songs (2007/07/08)
- 冨田ラボ「Shiplaunching」、そろそろ発売 (2006/02/17)
- 10mix #110 (2008/03/30)



いい話なのに2コ上がってるよ!
と報告しようと思ったら、もう直ってる!
早く寝ろよう
ヤバイ。
キューンときてしまった。
ハルはいろんなことを思い出す季節ですね。
少なくとも自分にとってウキウキとはいかないのは
結構ツライ出来事が多かった季節からかもしれないけど。
なんか、えぐられたよ。
あと、早く寝ろよう
日々変わってゆく人や風景を何気ない心持ちで通り過ぎていくことも暫しあるけれど
目で見たこと、感じたことは心の心底にひっそりと生きていたり。
認めたくないことを自然と認められるように、それこそ自然の流れで変化していけたり。
人間は本当に素晴らしいものだと思う。
このアルバムも然り、こんなに素敵な音楽を生み出せる人間は、素晴らしい。
心に響くものを誰かしら何かしら持っているものね。
わたしはコダイラさんからいくつもそれを頂いているわ。
どうもありがとう。
うあ、また毎度えらい朝方に長々と言葉おこしてるんだねぇ。
ふとHP上を見上げたら、桜!この桜もまた眺める度しみじみとしいろんなものがこみ上げるよね。この話を読んだ時のように。
巡る頃合ですな。
なんかとっても「よかったな」と思う私の母心はなんでしょう(笑)。
きっと、沢山の素晴らしい出会いがコダくんに今の気持ちをもたらしたんだね。
そしてそれはコダくんの魅力ゆえであると思うよ。
ワタシはとっても嬉しい。
コダくんは都会暮らしをするようになったのに、ワタシは何故か田舎暮らしです。
そろそろ、たまには真面目な話をしてもいいじゃないか、とか思う28歳。
でも、恥ずかしいのでレスが出来ません。
コメントのみならず、メールとかもけっこう頂きました。
みなさんどうもありがとうございますー
泣いたよ。そして買ったよ(アマゾンで)
ほ、ほんとに注文数が増えている!!(いっぱい聴いて下さい)