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Al Kooper / Naked Songs

by コダ on 2007.07.08.

僕は正直なところ、「ラブソング」というものがあまり好きじゃなかった。

「好きじゃない」というのはあまり正しくなくて、どちらかというと「近づきたくない」ものだった。
なにか、自分にはもう関係ないもののように感じていたからだ。

愛する恋人に向けて「愛のうた」を歌うこと。
愛する恋人に向けて「愛してる」と伝えること。
そんなもの、一生に一度、本当に愛する人に言ってしまえばオシマイなのではないか?
それを作品として残す理由は、一体どこにあるというのか?
そもそもその「残されたことば」は、愛するその人にとって、死ぬまで響き続ける輝きを持っているものなのか?

僕にはよくわからなかった。
だから僕は、「ラブソング」と呼ばれる歌のことを信じなかった。
格好をつけて言うと、「愛」ということば自体も、あまり好きではなかった。
なんだか、どうしても、嘘くさいもののように感じてしまうのだ。

そこら辺に転がってることばを拾い集めて綴ったような、「ラブソング」と呼ばれる歌。
ヘラヘラしながら、「いい歌だね」なんつってカラオケで歌われる「ラブソング」と呼ばれる歌。
その都度こさえた恋人と聴き、ヒットチャートから消えると忘れ去られていく、「ラブソング」と呼ばれる歌。

世の中にはそんな、何物にも換え難い、素敵な「ラブソング」がたくさんある。

…バカか?お前らは。
お前らの愛する人なんて、本当は、もうとっくにいなくなってるぜ。
ざまあみろ。

僕は、いつもそう思っていた。
それは、僕が「愛してる」と言いたかった人が、もうとっくに、僕のそばにいなかったからかも知れない。

 

あれから何年も経ち、いい加減30歳になろうかという夏の夜に、僕は手紙を書いた。
なんて書いたかは、もう忘れてしまった。

 

こないだ、「3日後に話すよ」と言っていた話のことを書きます。
いつか君に話そうと思っていた、 Al Kooper という人の、「Jolly」という歌の話です。
この歌は、アルが30歳になろうとしていた1972年に、別れた恋人・ジョリーへ向けて歌ったうたです。君と離ればなれになってから1年後の真夜中に、僕はこの歌と出会いました。

アルはこの歌を、とても後悔しながら歌う。
「君は僕を目覚めさせてくれた」「君は僕の手を引いてくれた」「ジョリー、君は僕の太陽だったんだ」と、ほとんどのことを諦めてしまったかのような、とても優しい声で歌う。
最後には、引きちぎれてしまいそうな叫び声で「ジョリー、君を愛してる」と繰り返しながら、淡い夢に泣き崩れていく子供のように、たくさんの未練を残しながらフェイドアウトしていく。

つまり簡単に言うと、これは、ちっとも格好良くない「赤心の歌」という名のラブソングです。
でも僕は、この歌を究極に美しいと思う。

ところで、この歌を聴いて必ず思い出すのは、君のことでした。
むしろ、君のことを思い出すために聴き続けたと言ってもいいかも知れない。
君がかつて僕に教えてくれたことや、僕にかけてくれた大切なことばのことを、僕はよく思い出した。

君と離ればなれになってしばらく落ち込んでいたとき、僕はこの歌に出会って少し元気になり、「君とはもう二度と会えないんだ」と言うことに気づき、この歌を聴きながらたまに泣いて、今日まで生きてきました。だから僕は、もう一生君に会うことはないだろうと思っていたけれども、もしいつかまた、自分が本当に愛する人に出会えることがあったとしたら、その時は、その恋人に向けて「愛してる」と伝えようと思っていました。
それはかつて、若かった僕が、君にしてあげられなかったことだったから。

 

あれから何年も経った今、他ならぬ君が僕の隣にいる今日のこの状況を、僕はなかなか上手に説明することができません。
アルにはちょっと申し訳ないけど、当時の彼とちょうど同じ歳の頃、僕はジョリーと再会した。

 

小雨が降る5月のある夜、渋谷の裏通りで偶然(正直に言うと、半分は偶然じゃないけれども)すれ違った君は、30メートルほど離れてから僕に声をかけてくれた。
本当はすれ違う前から僕に気づいていたのか、30メートルほど背を向けて歩く間に声をかけるべきかどうか迷ったのか、もしくは、30メートルほど離れるまで僕のことをぜんぜん思い出せなかったのか。

そんなことは、もはや今となっては重要なことではないのかも知れない。
でも、あのときの君の表情を、僕は一生忘れることがないだろう。

はっきり言えることは、あの30メートルが「僕らが決して会うことのなかった5年以上」の距離だったということ。
その向こうから何の疑いもなく呼び止めた、僕が今後ずっと忘れることのない君の嬉しそうな笑顔が、「僕らの一生の始まり」になったということ。

あの日、傘を差さずに歩いていて本当に良かった。
いつもありがとう。
愛してる。

 

僕の恋人が、今日も我が家に帰ってくる。
素敵な話だと思いませんか。

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Comments: 7
  1. akko (p)

    なんだよーもう、ステキすぎるよー!
    うるうる

  2. マンボリーヌ (p)

    まいった。
    すごいいい話じゃないか。不覚にも涙ぐんだよ。

  3. wtnb (p)

    二人が重いインフルエンザにかからなくて良かったね。
    そして、コダ君が現れなかったあの晩に、こんなドラマがあったことを僕は一生忘れることがないだろう。

  4. maxi (p)

    久しぶりに見たら、こんなにステキなことがあったなんて。
    すごくすごく、よかったね。
    なぜかうれしくなっちゃって、思わず私も泣いちゃったよー

  5. chang (p)

    わー!なんだコレ!ステキすぎるぞ!
    そしてあらためておめでとう!
    パーリーにアタシも駆けつけたい(そしてニヤけたい)です!

  6. neko_ring (p)

    媚骨堂で会って、おめでとうが言えたので、思わずまた読み直して、ニヤニヤしてしまいました。
    その顔を母に見られて「気持ち悪い」と言われました。。。
    でもそんなコト気にしない☆

    あ~幸せだなぁ~♪♪♪

  7. コダ (p)

    akkoちゃん
    ステキだろう!(あえて肯定)
    オット君から「こんな文章でもアフィリエイトか」と嘲笑されました。
    今後はセコセコ稼いでレコード代貯めなきゃだよ

    マンボ
    フィクションだよ!
    (怒られそうなので内緒にしといてください)

    ワタさん
    真似すんな!
    そうだ、そういやあそこのイベント行こうと思ってたんだった。懐かしいね。
    ひたすら腹減ってるうえに雨降っててすごい機嫌悪かったのを覚えてるよ

    マキちゃん
    フィクションだよ!(2回目)
    まあアレだよ、誰にでもひとつぐらいありそうな話ですよ。
    どうもありがとうっす。

    チャン
    フィクションだよ!(3回目)
    パーティは福岡でも開催する(アユさんが勝手に)のでそっちに行ってください!ありがとう!

    ねこさん
    フィクショ(4回目
    日曜はどうもありがとうございましたー。
    今度ニヤニヤしてるシルエット缶バッチも作ります。

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