ミックスCDの作りかた(4) 「収録曲を決める(カンペを作る)」
「ミックスCDの作りかた」、第4回目は「収録曲を決める(カンペを作る)」です。
前回の記事はこちらです。( もくじはこちら )
いつになったら録音するんですか
皆さん、そろそろそう思っているに違いありません。
しかしミックスCD完成までの道のりは長く険しいのです。(僕の場合)
環境準備も整い、全体のテーマや軸にする曲などが決まったら、試しにミックスしてみるなり頭の中で想像してみるなりして、ミックスCDのボリュームになるように構成を膨らませていきます。言うまでもなく、いちばん時間のかかる部分です。
ただ第3回でも書いたとおり、この部分については他人がどうこう言うものでもありません。
そこで今回は、僕がミックスCDを作るときに書いている「カンペ」についてご紹介します。
・・・しかし、「カンペの書きかた」なんて紹介するサイトが今まであったでしょうか。
僕はいったいどこへ向かおうとしているのでしょうか。
以下の内容について書いています
「楽譜」としてのカンペ
僕は楽器を演奏することができませんが、ミックスCDを作るにあたってのカンペは、演奏者にとっての「楽譜」と同じようなものだと思います。
ライブで楽譜を見ながらギターを弾くロックンローラーはいませんが、レコーディングの時には楽譜とかメモを見ながらその通りに演奏しますよね。
・・・ってそりゃレコーディングにもいろんなやり方があるでしょうから一概にそうとは言い切れませんけど、少なくとも勝手にアレンジを変えたり、自分だけ速いピッチで演奏したりすることはないでしょう。それと同じです。そういうことにしておこう。無粋なツッコミはやめよう。
とは言え、DJは自ら楽器を演奏するわけではないので、もちろん正しい書きかたなんてありません。自分で必要な情報を、自分がわかるようにメモするだけです。
では、実際にカンペの中身を見てみます。
「Peanuts Cafe Sampler vol.081」カンペ
イベント「Peanuts Cafe」で配ったミックスCDのカンペです。(収録曲はこちら)
ジャジャジャーン。
この例だと、「Sunlightsquare」「Xodo」「マデリンベル」とメモ書きしてある左上部の3曲が「今回はこれを入れよう」と最初に決めていた曲(ショートミックス)です。
これの頭やお尻につながりそうな曲をいろいろ試してみて、うまくミックス出来そうであれば書き足して・・・と、これを繰り返しながら50~70分程度のミックスを考えていきます。
収録曲が決まるころには、上記画像のような感じでたいていグチャグチャなんですが、よほどのことがない限りは書きなおすことなく、これを見ながら本番録音を行ってます。
カンペに僕が必ず書く情報は以下の3つです。
- 曲名・アーティスト名 (どの曲を流すのかがわかる程度でOK)
- ピッチのパーセンテージ
- ミキサーを中心として、左右どちらのターンテーブルで流すか
最後の「左右どちらの・・・」というのは、少なくともわが家の環境ではかなり重要です。
CDJはデジタルのピッチ調整なので、例えばピッチを「+1.0%」に合わせればどの機器でも同じ速さで再生されますが、ターンテーブルは機器によって若干の誤差があります(※注)。
うちの機器だと2台間で約0.5%の誤差があるため、カンペを作ったときと左右逆にレコードを置いてしまうと、メモしておいたピッチと1%ほどズレてしまう計算になります。
カットインでミックスするのならこの程度のズレはあまり影響ありませんが、クロスフェードで徐々にミックスするケースでは、この1%はけっこう大きいです。BPM100程度の曲でミックスする場合、おそらく3小節目(7~8秒)ぐらいで明らかなズレが出てくると思います。
※注: これは故障ではなく、機器をこじ開けて自分で調整する方法もあるようですが、ぴったり合わせられる保証もないし修理に出すほどのことでもないので、僕はこうしてカンペにメモることで対応してます。なお、誤差の有無や程度は環境・機種などによって異なると思います。
そのほかにもいろいろと書いてあります。
「-1.0→0.0」などのメモは、生音どうしのミックス中にどうしてもズレが出てしまうためミックスしながらピッチフェーダーを変える箇所。「きもちおそめキュー」「大きめでin」と書いてあるのは次にCueする曲の音量やタイミング。「プァ!!」とか「2回目のウウウウ~でCue」とか書いてあるのは前の曲の終りのタイミング、つまり次の曲を入れる合図になるもの。
という感じ。
・・・あのー、本当にただのメモなので、こう改めて説明すると僕すごい頭悪い人みたいですけど、先ほども書いたように、自分が読めて意味がわかればいいのです。
その他のカンペ
ええ~い大盤振る舞いだ!他のも見せてやれ~!(ノッてきた)
このサイトでやっている「10mix」のカンペ、#199~#202のときのものです。
「10mix」は全体の時間が短く、あと「練習ミックス」的な意味合いも強いので、メモはわりと簡素です。あとこれらの情報はあとでミックスCDを作るときに使えそうなものが多いので、Excelファイルにすべて一覧化してます。これやり始めたらかなり便利になりました。
これは現在作成途中の「10mix DIGEST #151~200」のもの。
左ページ部分の流れはだいたい確定しています。ここからさらに新しい曲をくっつけたり変更したり、という感じ。最近では10曲ぐらい溜まったこのぐらいの段階で一度録音して、とりあえずどんな感じか試聴してみたりしつつ進めています。
ということでこのミックスにご応募いただいている皆さん、実は本日時点でまだここまでしか出来てませんごめんなさい。(満面の笑顔)
ちょっと見づらいですが、2010年開催のVOODOO汁で配った「カルツ(略称)」です。
ブードゥーのミックスはJ-POPオンリーなうえほぼCDJしか使わないのでミックス自体は簡単なのですが、開始/終了のTimeやイコライザ出力など、それなりにはメモってます。
最後は、ここ数年で最も選曲に悩んだ「Peanuts Cafe Sampler vol.096」のもの。
ここまでくるともう何がなんだかわかりません(泣)
今回はこれにて終了です
どうでしょうか。なんとなく考えかたの雰囲気は伝わったでしょうか?
他の皆さんがどういう感じで選曲・構成を考えているのかはわかりませんが、僕のカンペはわりと細かいほう、むしろ細かすぎて伝わらない選手権に出れるほうだと思いますので、あくまでも参考程度にしていただければ幸いです。
なお、ハウスのようにBPMが一定な曲のみでミックスを作るのであれば、ここまで細かいカンペは必要ないと思います。単純にミックスするだけなら特に難しいこともないので、カンペすらも不要かも知れません。(僕なら作りますけど)
さて毎回長文になるこのコーナーですが、次回はいよいよ録音!
「録音する ~ 音源をチェックする」を公開予定です。
[ 「ミックスCDの作りかた」もくじ ]
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